細胞的神経的文脈

ゴミブログ なう

シルバーレアの私たちへ

 いらなくなったものを中古品として売るときの相場は買った値段の半額、というのがグローバルスタンダードだと信じて止まないけれど、カードゲームの世界ではそういうことでもないらしい。いわく50円で作れるカードは10円でしか売れないし、3500円かけて一枚作れるカードは1000円でしか売れない。ちなみに人対人の取引は不可能であり、支配者たるゲーム会社にレッドなんとかいう名前の通貨をバンバン明け渡す方式になっている。

 オカルト好きの母が嫉妬するのは霊能力者だそうで、実は彼女は自分の「無能力」を自覚しているのかもしれない。これは私にとっては意外も意外なことで、日ごろのそれっぽい自慢話はじゃあ何だったんだって話になる。きっと母はその矛盾に気付かないまま、私に対して腑抜けたコンプレックスを曝け出したんだろう。彼女は今や、自身にとっても娘にとっても、無能力者のブロンズレアだ。ただし数日立てば向こうは忘れて、また自分の価値を妄想の中で高めてしまう。傷ついたのはこっちだけだ。

 一方東大生の彼だが、ただでさえ東大生なのに児童虐待の被害者であり、さらに特殊なステータスを3つ4つ持ったマジヤバ人種だ。その淫蕩と怠惰で著しく損なった人格から飛び出す悪魔的な小説は正直男ウケの塊でしかないが、かといって彼自身も上記の通りクソ人間だが、ちょっとおかしな環境に生まれたシルバーレアな私にとって、本物のレアの中のレア、レジェンドクラスの彼がただただ羨ましくて、その人生の全てを私がこの世に残してあげたいような気がしていたりして、しかしそんな暇さえ無いほど彼との時間は光速で過ぎていくのだ。

 没個性が謳われる(謳われてはいないが)この世の中で腹の中の小石みたいに消化されず流されもしない人間がいるのは素晴らしいことかもしれないが、当の本人はいつも至って寂しそうだ。理解者が一人くらいいないと生きていけなさそうに見える。暴論ぶちあげた挙句最後に私自身が社会不適合だねぇって笑ってピリオドを打ったクソ日記しか書けない私たちはマジョリティたるブロンズレアとは異なるにしても結局シルバーレアに過ぎない。ひとつ上のレア度を獲得するにはまず自らのレア度を冷静に把握することが重要です、ってレア度の教科書ならそう書いてあるだろう。けどそのカードゲームでは、シルバーでもレジェンドと組み合わせればとても強くなるカードがあるそうだ。私に残された道はもうそっちしかないような気がする。複雑性を捨て、コストの割には使いやすい人間になることで、小山の大将になろう。